【映画脚本】日本を開国させた男/日米和親・修好通商条約締結物語 ③

日本を開国させた男/日米和親・修好通商条約締結物語 ③

日米修好通商条約締結

○農村(夢)
ひどい干ばつ・飢饉の様子。
照り付ける太陽、枯れ果てた田畑。
鍬を手に穴を掘っている忠優。
掘っている穴は棺桶の入る大きさ。
忠優の横には、横たわった死体の山。
ハッと目が覚める忠優。

○上田城・西川手櫓・内
忠優が起きると、横に正室三千(28)。
団扇で煽ぐのをやめ
三千「うなされていましたが」
忠優「また例の夢だ、上田に帰ると必ず見る」
忠優の前に広がる上田の全景。

T『信州・上田』

○養蚕所・外
養蚕の作業をしている女達。
桑の葉が入った駕籠を背負う女。
ぐつぐつと竈で眉を沸騰させている女。
滑車を使って糸繰りをしている女。
商人Aの声「い、異人と商い…」

○上田城・応接間
忠優と三千が商人と話している。
忠優「できぬか」
商人A「急に申されましても…」
商人B「異人を見ただけで目が腐り、近くに寄れば不治の病にかかると言います」
忠優「ばか者、そんな事は迷信じゃ。我を見よ。異人と会っても平気ではないか」
商人A「そうは言っても現実に異人が来たのと同時にコロリが蔓延しました」
商人B「恐れながら、御殿様が平気なのはご器量が豊か故の事。我ら一介の商人ではとてもそれを打ち払う力はございませぬ」
手で払い、もういいという合図の忠優。
忠優「多くの者が飢えて死んだ」
三千、忠優を見る。
忠優「天保の飢饉でじゃ」
三千「はい…。ですが殿が江戸に生糸売買を認めさせて、だいぶ救われました」
忠優「そうだ。再びあれを繰り返さない為に何としてでも…」
忠優を敬意の目で見つめる三千。
息子の忠礼(7)と忠厚(6)が部屋に飛び出してくる。
でやーっと忠礼が一本背負いをし、忠厚が投げられ襖をぶち抜く。
おのれと今度は忠厚が巴投げ、焼き物などが割られる。
庭に飛んでくる八木剛介(44)。
剛介「若君達。そちらはダメでござる、某がお相手いたそう」
忠厚「ゆくぞー、剛介ー」
庭へ二人で剛介に飛びかかっていく。
まともに受ける剛介、痛そうな顔。
それを愛おしく眺める忠優と三千。
三千「兄の忠礼は今年で7つ。そろそろ学問をやらせねば」
家老B「殿」
入って来た家老Bが忠優に耳打ち。
忠優「なに、阿部殿が」
直ぐにバッと立ち上がる。

○寺・外観(夜)
通夜が営まれている。

○同・内
棺の中の凛々しい阿部の顔。
読経のなか、牧野や斉昭、慶永、直弼、そして忠優が列座している。
牧野の隣に堀田備中守正睦(50)。
堀田「阿部殿はいくつでしたかな」
牧野「38…です」
堀田「その若さで…、まさか伊勢殿が亡くなられるとは。アメリカとの次なる条約制定を控えたこの大変な時期に…」
牧野「堀田殿、申し訳ないが某も老中を辞したいと考えておる」
堀田「なんですと!」
牧野「某は伊勢殿とは一心同体。伊勢殿の影としてこれまで表に裏に動いてき申した。伊勢殿が亡くなった今役割も終わったかと」
堀田「で、ですが、今わしが老中首座であるも伊勢守あってのこと。さらに次席の牧野殿までやめたら政などできませぬぞ」
牧野、少し考えたのち、
牧野「かの御仁の出番でしょうな」
堀田、牧野が見ている方を向く。
そこには忠優。
堀田「い、伊賀守…」
牧野「政の柱とはつまり勘定。伊勢殿が実権を握ってきたのは勘定方を握ってきたから他ならぬ。それが勘定奉行・松平近直。そしてもう一人の勘定奉行・石河政平を使い、同時に勘定方を掌握してきた人物がいる」
堀田「それが松平伊賀守忠優…」
牧野「いかにも。老中を辞めて2年。表向きは御老公の意向で老中を罷免されたという形だが、実は次なる条約・通商条約に向け、極秘に交易の準備をしておる」
堀田「な、なんと…、まさかそんな…」
忠優を見る堀田と牧野。
離れた所で、斉昭と慶永。
斉昭「い、伊勢が死ぬとは…。これは幕府にとっては大変な損失ぞ」
慶永「無念です。我々は最大の同志を失ってしまいました。急ぎ島津斉彬殿にも使いを送りましたが、一層一橋様御継嗣擁立への運動を急がなくてはなりませぬな」
斉昭「うむ。だが、それよりも老中人事じゃ。代わりに誰が入る?」
慶永「伊賀殿しかいないでしょうな」
斉昭「なにぃ。あいつは俺が辞めさせたばかりではないか」
慶永「2年経つので問題ないでしょうな。そもそも罪を犯した訳でもないですし」
斉昭「ぐぬぬ」
離れた所の直弼ら溜間勢。
直弼「やはり伊賀が入るか」
直弼、面白くない顔。
溜間A「伊賀殿は譜代筆頭・酒井家の出。当然我ら溜間派になるので大歓迎ですな」
直弼、苦々しく忠優を見る。
目をつむり瞑想する忠優。

○(回想)阿部邸・寝室・内
阿部が床に伏しており、脇に忠優。
阿部「忠優殿、これを」
阿部から渡されたもの、それは太刀。
阿部「腹も立ち、頭に血が上る時もある。そんな邪気をこれは断ち斬ってくれよう」
受け取る忠優。
忠優「頭に血が上るのは自分の性分。我には阿部殿のようには振る舞えぬよ」
阿部、ふっと笑う。
阿部「だが、貴殿がやらねばならぬ…」
忠優「…」

○寺・内(夜)
傍らの太刀を見つめる。
顔をあげ、決意の表情の忠優。

○江戸城・御用部屋・内
書類の山の中で忠優、井戸、石河が井上清直(46)に指示を出している。
忠優「交易の品目で米・麦は対象外とすること、認められたか」
井上「はい。米は日本人にとって特別でありしかも生産高は自給自足できる程度なので売り渡しがたいとのこちらの主張に対し、米価が高騰すればジャワその他から輸入して調達すればよい、と反論されましたが、最終的には米・麦の輸出禁止を認めさせました」
忠優「よし。武器は幕府のみが購入する、アヘンは全面禁止、その最も重要なる3点を認めさせたのは大きな成果だ。よくやった」
井上「はい」
石河「だが問題は関税だ。輸出税は認められず、しかも輸入税にしても品目によっては無税の物もある。関税をかけなくては世間の物価は滅茶苦茶になるぞ」
忠優「いま計算しているが、関税は輸入輸出とも一割二分五厘とすればどうか。西洋諸国同士で二割でやっておるのだ。これくらいは行けないか」
井上「一割二分五厘、西洋諸国は二割…」
井上にオランダの書物を見せる忠優。
忠優「そうだ。ちなみに侵略されたインドや清国には関税はない。あってもせいぜい五分程度。それはもはや属国といってよい」
井上「…」
石河「…」
忠優「だが、もし税率一割ニ分五厘で締結できたら、その関税収入はわが幕府の年貢収入に匹敵する」
井上「年貢収入に匹敵。そこまで行きますか」
忠優「いける」
井上「わかりました。やってみます。いえ、必ずやります」
忠優は書物を指さし説明している。
井戸「あと少し気になる事が」
石河「なんだ、例の勅許とやらのことか」
井戸「ああ、なんでも堀田首座自ら京に赴き、帝に報告するらしい」
石河「やることがなく暇なのだろう。だが往復だけでも時間は食う。一刻も争う状況、足を引っ張るのだけはやめてほしいな」
井上との話に夢中な忠優。

○蕃書調所・外観
江戸城の堀が見える。
庭のポールに翻る星条旗。

○同・内
井上と岩瀬忠震(38)がハリス(53)、通訳ヒュースケンと交渉している。
井上「次に、最大の焦点である関税であるが、輸入税・輸出税ともに一割二分五厘でいかがか」
ハリス「輸出には通常関税は掛けませぬぞ。輸出に関税をかけるということは、日本国民の産業に重荷を課し、商人にとっても迷惑で、密貿易の取り締まりに多大な経費を要し国家の収入に益することがありませぬ」
岩瀬、オランダ語で筆談と口述。
岩瀬「輸出税を掛けないとするならばそれに見合う財源を確保する必要がある。輸入税を上澄みせねばなるまい。2割でどうか」
ヒュースケンと話すハリス。
ハリス「20%…」
岩瀬「一般品目は2割とする、ただし、ハリス殿が求めるように食料・建材・漁具など一部品目については五分程度にしてよい」
ヒュースケンがハリスに
ヒュースケン「税率20%は欧米諸国と同レベルの関税率になりますが」
考えているハリス。
エアそろばんをしている井上。
岩瀬に指示を出す。
岩瀬「食品を五分にする一方、酒類は高くしたい。三割五分でいかがか」
ハリス、ヒュースケンと相談。
ハリス「井上殿は何をやっているのか」
井上の手真似をしながら
井上「そろばんでござる」
そろばんを出す。
ハリス「これで計算を…。その道具がなくてできるのか」
井上「はい」
ヒュースケンが口笛を吹く。
ヒュースケン「マジシャンか、君達は」
難しい交渉の中に笑いが漏れる。

○雲行丸・甲板
海上を航行している雲行丸。
斉昭、慶永、島津斉彬(51)がいる。
慶永「全く斉彬殿には感服いたしますな。黒船来航からわずか2年で蒸気船を作り上げてしまうとは」
斉昭「さすがのわしも脱帽じゃ、薩摩」
斉彬「いえ、まだまだこれからです。それより例の件、いかがですかな」
慶永「勅許の件、ですな。働きかけは鷹司太閤を通じて行っております。通商条約締結の件に紛れて御継嗣を一橋様にという勅命を出してもらう目算で」
斉昭「鷹司はわしの義理の兄にあたる。間違いはない」
斉彬「結構。帝と共に上様にも御台様を通じて働きかけをしてあります」
慶永「ご息女の篤姫様か。それはまた」
斉昭、満足げにうなずく。
斉彬「御老公、さらに手を打ちます。確実に我々が幕政に参加する為に」
慶永「この上、さらに手をお打ちになる」
斉昭「恐ろしい男よ、お主が敵でなくよかったわ。で、手とは」
斉彬「堀田首座に要請させるのです。松平越前守慶永殿、つまり貴殿を…」

○江戸城・外観
江戸城の奥深くまで進み大奥が現れる。

T『大奥』

○同・大奥・風呂場
湯気の奥から総檜造の巨大な湯船が見えてくる。
湯船につかっている後ろ姿の女性。
立ち上がり、長い髪を湯の中に引きずりながら、湯船から出てくる。
浴衣姿の侍女Aが湯船から出てきた女性の髪を持ち後ろから付いていく。
女性が椅子に座ると侍女Bが体を洗い始める。
その傍らに膝まづいている幾島(43)。
幾島「篤姫様」
椅子に座っている女性は篤姫(24)。
幾島「御父上様から密書が届いております」
篤姫「薩摩の御父上から…。でなんと?」
幾島「上様に御継嗣に一橋慶喜様を推挙する件、急ぐようにと…」
篤姫「や、やはり来たか…。やらねばならぬな、なんとしても」
篤姫、決意の表情。

○同・同・応接間
煙管の煙。
煙管をふかしている妖艶な女性、年寄・瀧山(39)。
面会している直弼と長野。
瀧山「井伊様、何をぐずぐずしておられます。一橋派の動きが活発になっておりますぞ」
直弼「そうなのでござるか」
瀧山「御台様はやはり一橋派じゃ。ご存じないのか。では京での不審な動きは」
直弼「京ですと?」
長野「どうやら堀田首座が通商条約締結の勅許をもらう際に、一橋派が御継嗣の勅命を出させようと画策しているようです」
直弼、思わず腰を上げる。
直弼「なんだと!み、帝が一橋を御継嗣に推す勅命とな。なんたる事を」
長野「近衛家に近い薩摩と鷹司家に近い水戸家がしきりに動き回っております」
瀧山「大奥の地獄耳、この瀧山にも聞こえてきております。如何されるおつもりか」
直弼「許さん。そいつらを直ちにひっ捕えい」
長野「殿、これこそ京警護に戻った我らの思う壺。ひっ捕えるのは簡単。ですが勅命は勅命で出させて、内容を一橋から紀州慶福様へ変えてしまえば、棚から牡丹餅」
瀧山「なるほど。そのような事は現関白・九条家に近い井伊家なら造作もない事」
直弼「あの都落ちの時の策…か。今なら京と帝を十分活用できるという訳か」
不敵な笑みを見せる直弼。

○江戸城・勘定部屋
勘定方数十人を前に演説する忠優。
忠優「一月十二日の第14回交渉を持って、交渉は妥結した。関税は輸入税が一般品目にて二割、酒類三割五分、食糧・建材・漁具が五分となった」
『おお、やったな』『さすが井上だ』『いや実質は岩瀬だ。昌平黌史上最高の頭脳と言われるだけはある』等の声。
忠優「喜ぶのはまだ早い。開港地であるが、長崎・函館と残り一港は神奈川となった。アメリカ側が執拗に求めた大坂開港は断固拒否し、認められた」
『おお』の声。
忠優「これによって海外との交易はすべて関東で管理できる。それはつまり商いの中心が関西から関東に移ることを意味する。幕府が完全に復活、いや、家康公当時より強化された江戸幕府がここに誕生する」
一同、静まり返って、感動している。
感極まり、勝鬨を上げる岩瀬。
岩瀬「オオ、エイ、エイ、オォ」
繰り返される勝鬨。
充実感で満ちている一同の表情。
誇らしげな忠優。

○京都・全景

○京都御所・庭(朝)
大勢の公家達が座り込んでいる。
縁側で対応する関白・九条尚忠(60)。
九条「な、なにごとじゃ」
座り込んだ内の一人、岩倉具視(32)。
岩倉「関白様に申し上げます。帝の御心はこの神州を夷狄よりお守りする事。ぜひとも帝のお気持ちを汲み取り、異国との条約の勅許は出さないようお願い致します」
九条「な、なんたる事。貴殿らここをどこと心得る、御所ぞ。こんな事は前代未聞ぞ」
公家A「神州の一大事に黙っておられません」
公家B「断固反対。攘夷あるのみ」
公家C「関白は金で魂をお売りなされたのか」
九条、ひーと言いながら逃げる。

○同・玉座
孝明帝(27)に謁見している堀田。
手前に関白と太閤・鷹司政通(63)。
帝「今回の騒動、まさに前代未聞じゃ。このような混乱が起きた以上、条約勅許を下ろす事などとてもできぬ」
堀田「な、なんですって」
九条を見る堀田に対し目をそらす九条。
クククと笑う鷹司。
九条「太閤はん、何を笑われるか。貴殿は元来条約賛成だったではないか。そなたの主張が否定されたのでありまするぞ」
鷹司「知りませぬな。臣は帝の意をくみ、始めから勅許反対を主張しておりました」
九条「なんと。よくもまぁ、節操のない」
帝、呆れて
帝「やめよ」
堀田「…」
帝「備中守、申し訳ない。勅許なしではお困りであろう。将軍継嗣の勅命をしたためたので受け取られよ」
堀田「将軍継嗣の勅命?」
帝から九条に渡される勅書。
九条「急務多端之時節、養君御治定、西丸御守護、政務御扶助ニ相成候ハ、御にぎやかにて御宜被思食候」
堀田「にぎやかにて…」
鷹司「にぎやかにて!?、おかしいぞ、そこは年長で英傑で人望のある者、のはず」
九条、クククと笑う。
鷹司「や、やらはりましたな、関白はん」
九条「はて、何のことやら」
帝「…」
堀田「…」
堀田、さすがに怒る。
堀田「お待ち下さい。条約問題は待ったなしです。勅許が下りないという事なら致し方ない。しかし、幕府はこの神州を守る責任があります。戦を回避する為にはこちらで判断する場合もあります。その事はご理解して頂きます。御免」
出ていく堀田。
あーあ、という顔の九条と鷹司。

○江戸城・外観
T『安政5年(1858年)4月21日』

○同・謁見の間
堀田が家定に謁見している。
家定は例の如く豆を煎っている。
堀田「上様、堀田備中、昨日京より戻りましてございます」
家定、豆を味わいながら
家定「京の味はどうであった?薄味のようでいてしっかりダシが効いておろう」
堀田「は、はい…」
手拭いで汗をぬぐう堀田。
堀田「勅許についてははっきりとは下りませんでした。やはり公家方は異国の状況にうといゆえ…」
キッと堀田を睨む鋭い目。
しかしすぐにその色は消えて
家定「わしはどうもあの味が苦手でのぉ。つい江戸の味にしとうなってしまう」
堀田「…」
堀田、思案したのち、意を決して
堀田「上様、本日は京の報告の他に、もう一つ上奏したき儀がござりまする」
家定「なんじゃ、今度は京の水の話か?」
堀田「松平越前守慶永様を大老に据えたく、上申させて頂きます」
家定「…」
一瞬、驚いた表情を隠せない家定。
家定「慶永を大老じゃと」
堀田「はい。物が分からぬとはいえ、ここまで来た以上、京の了解を、勅許を得なければ前に進みませぬ。慶永様を大老に据えれば、御老公のお力添えも得て、一気に話を持っていけまする」
家定「…」
家定、まじめになる。
家定「お主ではできぬと申すか」
堀田「…はい。残念ながら」
家定「大老家は井伊・酒井・土井・堀田の譜代四家と決まっておる。それをお主は知らんのか」
堀田「むろん知っております」
家定「それであるのに、家門である慶永を大老に据える、というのだな」
堀田「はい」
射抜くような目で堀田を睨む家定。
家定「お主は幕府を潰す気か?」
堀田「え?」
堀田、家定を見る。
初めて家定がまじめな顔をしているのに気づく堀田。
家定「慶永を大老にしたら幕府は潰れるぞ。それでもよいのだな」
堀田「…」
家定の迫力に堀田、声も出ない。

○同・勘定部屋
忠優、石河、井上が作業をしている。
そこに報告に来る本郷。
本郷「今、堀田殿が上様に謁見致しまして」
石河「老中首座を辞任されたか。上様のこと、次席の伊賀がやれ、と早くも申されたか?」
本郷「それが…、越前守慶永様をた、大老に推挙致しまして…」
忠優「!」
石河「!」
井上「!」
冷静な忠優が立ち上がって激昂。
忠優「な、なんだと。慶永殿が大老??」
石河「ま、まさに青天の霹靂。自分で言い出した挙げ句、手ぶらで帰還した己の失態は棚に上げ、越前様を大老にして保身に走ったか。それにしてもこれはひどい」
井上「一体どういう事なんです、これは」
本郷「勅許を得られなかっただけでなく、京では御継嗣問題の工作が暗躍していたようです。勅許を得るにはまず継嗣問題を片づけなければ、との判断のようです」
石河「御継嗣をだしに、などと何たるデタラメ、なんという体たらく。堀田殿がまず辞めるべきであろう」
忠優「いや、堀田殿の進退等どうでもよい。問題は条約締結だ。もう交渉は妥結済み、後は調印を待つのみなのだぞ」
本郷「条約の議論は全くなされなかったとの事。岩瀬など部屋に入る事さえ許されませんでした。身分が低いという理由で」
怒りに震える忠優。

○上田藩邸・道場(夜)
剣を振っている忠優、傍らに剛介。
父の声「忠優よ、お主が長男に生まれておったらな。この譜代筆頭・酒井雅楽頭家30万石の当主として今頃大老であったものを」
義父の声「忠優殿、大老四家である酒井家からこの上田5万石へ…、次男なるが故とはいえ其方ほどの器量、誠に心苦しい」
一心不乱に剣を振る忠優。
かしゃりと剣を鞘に納める。
阿部から授かった太刀。
忠優「上様に会うぞ」
剛介「では明日早速手配を」
一点を見つめる忠優、決意の表情。

○江戸城・外観

○同・謁見の間
上座に家定が座している。
下座には、忠優、堀田ら老中陣。
慶永、斉昭ら家門、外様が座っている。
口上掛「本日安政5年4月23日を以て大老就任を命ずる」
声「ははぁ」
平伏している男。
家定「よいな、井伊掃部守」
顔を上げると直弼。
堀田「!!」
慶永「!!」
斉昭「!!」
驚愕する、堀田、慶永、斉昭。
直弼「謹んでお受けいたします。不肖この直弼、幕府の為、徳川家の為、一心不乱に務めを果たしていく所存にござりまする」
堀田「…」
慶永「こ、これは…」
斉昭「な、なんと…」
驚きを隠せない一同。
一人、落ち着いた表情の忠優。
忠優「…」

○(回想)上田藩邸・道場(夜)
一心不乱に剣を振る忠優。
忠優「上様に会うぞ」
端で見ていた剛介。
剛介「では明日早速手配を」
忠優、何か思いついたように
忠優「…、その前に掃部守に会う」
剛介「はっ。それでは明日上様にお会いになる前に」
忠優「いや、今から行く」
剛介「え?、今からですか?この夜更けにござりますか…」
一点を見つめる忠優、決意の表情。

○(回想)井伊邸・応接間(夜)
待っている忠優に、入ってくる直弼。
忠優「夜分遅くたいへん申し訳ない」
直弼「何事じゃ、約束もなく」
黙って平伏する忠優。
下手に出る忠優にニンマリとする直弼。
直弼「唐突に、さらにこのような夜更けに、この溜間筆頭井伊家に訪問するなぞ無礼千万にも程がある。本来であったら目通りなどせぬところを格別な計らいを以て…」
それをさえぎるように
忠優「掃部守殿は」
直弼「む」
忠優「アメリカとの通商条約を進めるつもりでございますかな」
直弼「なにぃ」
直弼の顔を直視する忠優。
直弼「何をいきなり…、何なんだ」
忠優「昨日、堀田首座が上様に越前慶永殿を大老に推挙するよう進言された」
直弼「な、なんだと。越前が大老に?ば、馬鹿な。家門が大老になどなれぬわ。何を呆けておるか、備中は」
忠優「ですが、老中首座よりの正式なる推挙。これまで上様は政務は老中に任せてきた。それは任せたからには口は出さない、という上様の深い信任の現われ。であるからこそ阿部殿も我もこれまで長らく政務を取り仕切ってこられた」
直弼「…」
忠優「である以上、上様は老中首座の進言を無下にはしまい。そのまま容認してしまうことも充分あり得る」
直弼「な、なんたる事。越前が大老になったらそれこそ御継嗣は一橋になってしまう」
忠優、それは興味なしの顔。
忠優「確かに慶永殿が大老になれば、次期将軍には一橋慶喜公、後見役には水戸御老公、陰で操るは薩摩斉彬公、大奥は薩摩出の篤姫と政権が激変しよう。政策も当然変わる」
直弼「ぐぬぬ」
忠優「政策を変えさせなどしない。アメリカとの条約交渉は終わっているのだ。条約締結すれば列強の侵攻を防ぎ、さらに幕府財政を蘇らせることができるのだ」
直弼「む、むおう…」
じっと直弼の顔を見る忠優。
直弼「な、なんだ」
忠優、一旦目を閉じ、目を見開く。
忠優「掃部守殿に大老をお引き受け頂きたい」
直弼「!!」
時がとまったような空気。
一瞬嬉しそうなをするがすぐに険しい顔になる直弼。
直弼「わしに大老になれというか、お主が」
忠優「はい」
直弼「お主では大老にはなれぬからか」
忠優「…」
直弼「同じ大老家に生まれながら、江戸に生まれ10代で藩主となり、以来長く幕政の中心を担ってきたお主と、地方に生まれ15年も部屋住みで30過ぎて初めて上府したわし。それが今や立場は大逆転。しかもお主が頭を下げ、それを懇願する役目とは…」
忠優「…」
直弼「運命とは因果なものよの」
忠優、頭を下げたまま、受け止める。
忠優「ただし」
直弼「むっ」
忠優「通商条約はすぐに締結いたしますぞ」
直弼「…」
忠優「よろしいか」
直弼「あ、ああ」
忠優「万事にしきたりを大事にされる掃部守殿だ、武士に二言はありませぬな」
直弼「うう、そ、それならば貴様もわしの腰巾着として振る舞え。偉そうにするな」
忠優「…」
直弼「土下座せよ、土下座して懇願せよ。腰巾着の分際で…」
阿部の太刀を握り締め土下座する忠優。
直弼「はっはっは。で、就任はいつじゃ」
忠優「…。明日」
直弼「なにぃ明日だと。明日はわしの娘、千代姫と高松家との婚儀の日じゃ。また別の日に…」
ものすごい形相で直弼を睨む忠優。
直弼「わ、分かった。明日じゃな。婚儀は全て延期する。よし、そうなれば急ぎ準備をしなければならぬ」
立ち上がる直弼。
直弼「そちは段取りを頼むぞ」
出ていく直弼。
忠優、無表情。

○江戸城・謁見の間
家定と傍らに石河、直弼が座している。
家定「そなたの兄も大老であったな。伊賀守がその前大老にも仕えておる。大老の仕事のなんたるか、伊賀に聞けばよい」
直弼、フンという表情。
直弼「聞くところによると上様、堀田備中守は大老に御家門の越前慶永殿を推挙したという話、本当ですかな」
家定「まことじゃ」
直弼「慶永を大老に、というのは、御継嗣を一橋慶喜にしようという魂胆が見え見え。断固そんなことは…」
家定「あぁ、もう良い。何か京都でも騒ぎになったと聞いた。これはまさに徳川宗家の問題、他人が口を出す事ではないわ。それに世継など初めから決まっておる」
直弼「え?、ど、どなたにです?」
家定「わしに子ができなんだら、紀州慶福じゃ。少なくとも慶喜になるなんて事は余が生きている限りない」
直弼「そ、それは何より…」
石河が発言する。
石河「上様、ですがまだ内々に。アメリカとの通商条約締結が済むまでは控えるよう伊賀守様が」
家定「そうであったな。掃部頭よ。条約を調印し交易が本格的に始まったら幕府は潤うぞ。商いの中心も大坂から江戸になるのだ。そちも忙しくなるから前大老のように座っているだけでは済まぬぞ、あっはっは」
直弼「…、この者は…」
家定「今度、御用取次となった石河じゃ。面識ないか。長く勘定奉行を務めた者だ」
石河「石河政平にございまする。上様の身辺についてはこの石河にお任せ下さい」
直弼「…」
居場所がないことに唖然とする直弼。

○同・庭
忠優が紀州藩家老、会津藩主松平容保(22)に中居屋重兵衛(38)と重右衛門(39)を紹介している。
忠優「中居屋重兵衛と重右衛門にござる」
紀州家老「ほう、それではこの者どもが異国との交易の窓口を」
忠優「如何にも。三井ら豪商にも出店はさせるが皆及び腰。その点、この中居屋重兵衛は蘭学ができるし重右衛門は元は蘭医じゃ」
紀州家老「なるほど我が紀州藩には蘭学ができる商人はおるまい。ぜひ我が藩の物品についても頼むぞ」
重兵衛「ははぁ」
容保「交易となると、向こうの物品も買えるのでありますな。ペルリの持ってきた蒸気機関車ですか。あれには驚きました。あれを買うことはできますか、伊賀守殿」
忠優「さすがお若い容保殿。ただそれに見合う会津の物品を売らねば買えませぬぞ」
和やかに笑う一同。
通りかかる直弼と溜間A。
溜間A「交易の話のようですな。通商条約を締結したら自藩の物産を売りさばこうというのでしょう。まったく浅ましい。守銭奴ですな、あやつらは」
直弼「わ、わしに断りもなく」
溜間A「は?」
荒々しく歩き去る直弼。
直弼「わしを差し置いて、わしを差し置いて」

○越前藩邸・内
斉昭、慶永、堀田、斉彬が座している。
お通夜のような状況。
堀田「我々が最も見誤っていたもの、それは紀州派でも京都でも、そして伊賀守でもなく…、上様だったのだ」
呆然としている斉昭と慶永。
堀田「上様が暗愚だという風聞。あれは全く作られたものだったのだ。上様は暗愚のふりをしていただけで、実に聡明、いや暗愚のふりをするほど用心深く、恐るべき方だったのだ…」
たらーと冷や汗をかいている慶永。
慶永「上様が聡明?ま、まさか…」
斉昭「わ、わしは子供の頃から知っておるぞ。であるのに…、子供の頃よりしたたかであったというのか」
堀田「おそらく。そして上様の本当の姿を知っていた重役が二人だけいた。それが死んだ阿部伊勢守と、そして伊賀守だった」
慶永「そ、そんな…」
決意の表情で立ち上がる斉彬。
慶永「な、斉彬殿?、どちらへ」
斉彬「もはや実力行使も辞さず。ゆくぞ西郷」
西郷吉之助(30)を従え出ていく斉彬。
一同「…」

○江戸城・外観
T『安政5年(1858年)6月19日』

○同・評定の間
忠優・堀田ら老中、本郷・岩瀬・井上ら幕閣、上座に直弼が座っている。
岩瀬「昨年来エゲレス・フランス両国は清国に対し攻撃を加え、広州を占領し天津を制圧しました。そしてその結果結ばされたのがこの天津条約です」
文書を読む直弼。
井上「賠償金はエゲレスに対し四百万両、フランスに対して二百万両」
ざわつく一同。
『よ、四百万…』『合わせて六百万両ではないか』などの声。
岩瀬「さらに、南京をはじめ計10港の開港。アヘンの輸入公認、交易における関税率の撤廃。キリスト教の布教と清国における旅行の天下御免などです」
直弼「…」
『10港の開港…』『それよりアヘンじゃ、問題は』『いや、邪教の布教が最も深刻』などの声。
井上「エゲレス・フランスはこの勢いを以て日本にやってくる、ハリスはそう言っております。オランダ商館長に確認したところそれは間違いないとの返事」
目を閉じていた忠優、目を見開き、満を持して口を開く。
忠優「もはや機は来た。今決めずしていつ決める。通商条約を調印する。今すればこちらの条件で締結できる。アメリカにエゲレス・フランスの仲介役をさせられるし、関税により巨額の利益も得られるのだ。逆にこの機を逃せば、戦となり属国・奴隷のような条約を結ばされよう」
がやがやとなる場。
『奴隷…』『そうだな、それしかない』『今結ぶべし』『そうだそうだ』の声。
堀田「…」
発言権がなくうつむく堀田。
シーンとなる場。
みな、判断を求めて直弼を見る。
直弼「だが、まだ勅許を得ていない。勅許を得てからではないと…」
忠優「御大老!!」
睨みつける忠優。
忠優「何度も言ったが何度でも言おう。大権現家康公が幕府開闢以来、この国の政務を司ってきたのは幕閣である。幕閣が決め上様がご承認するのだ。そこに京など、長袖など微塵も介在しない。4年前の日米和親条約の際もそうだ。必要なかったが報告したのは1年半後。そうであろう、本郷」
本郷「間違いございません」
忠優「二百五十年も幕府が存続してきたのには理由がある。それはこの幕閣の仕組みだ。京は政に介在させず、しかも小大名である譜代が幕閣を構成する。それが御家門同士の権力闘争や外様謀反を防いできたのだ。大事にすべき祖法とは決して鎖国等ではない。それが分からぬか、御大老」
キッと忠優を睨みつける直弼。
わなわなと拳を握り締める。
直弼「…、できるだけ調印を引き伸ばすよう尽力…」
井上「極力そう致しますが、やむを得ない場合はよろしいでしょうか」
苦渋の直弼。
直弼「その際は致し方ないが…」
井上・岩瀬「承知」
すかさず出ていく両名。
ニヤリとなる忠優。
怒りに震える直弼。

○ポーハタン号(夕)
夕日に照らされるポーハタン号。

○同・応接室(夕)
ハリス・ヒュースケンと岩瀬・井上が向かい合って握手している。
双方書類を交換している。
T『日米修好通商条約締結』
周りでは将校達が拍手している。

○江戸城・評定の間(夜)
使者から報告を受けている。
歓声が上がっている一同。
安堵して満月を眺める忠優。

○井伊邸・廊下(夜)
バタンと襖を開ける直弼。
直弼「主膳、主膳はどこかー」
襖を次々と開け広げながら進む。
そして、開いた間から長野が現れる。
長野「と、殿、何事・・・」
長野の襟を掴みかかる直弼。
直弼「なんとか、なんとかせい、主膳。わしを部屋住みの書生から世子にしただろう。藩主にまでしたではないか。同じようにせよ。そうせい」
激しく懇願する直弼。
どす黒い表情となる長野。

○江戸城・将軍謁見の間(朝)
T『安政5年(1858)6月21日』
朝焼けの中、座って待っている忠優。

○同・将軍の間
床に伏している家定。
周囲には奥医師が集まっている。
奥医師「う、上様」
家定、周りを見回し石河を見つける。
家定「い、石河と二人だけにしろ」
一同の目が石河に向く。
奥医師「上様、我ら奥医師が側にいなくては」
家定「余の命じゃ。さがれ」
すごすごと一同、部屋を出ていく。
二人きりになる家定と石河。
家定「い、石河…、毒じゃ」
石河「え?、毒でござりますか!?。毒見役が申しておりますか?」
家定「余自身じゃ」
石河「う、上様自身…」
家定「ふふふ、また戯れと思っておるだろう、違うぞ。余は一通りの毒をかぎわけられる。なぜそんな事ができるか不思議だろう」
石河「は、はい…」
家定「小さき頃からの習慣じゃ。何せ…」
家定、冷たく笑う。
家定「余は実の祖父に毒殺されかけたからな」
石河「え?、そ、それは」
家定「そう、前々将軍、家斉公だ」
石河「!」
家定「余を跡目にはしたくなかったのであろう、あの人には53人も子がおったからな。もっとも、前将軍である父も余を跡目にはしたくなかった訳だが…」
石河、絶句。
家定「ふふふ、うつけのふりでもせぬと命がいくつあっても足りぬわ」
石河「う、上様」
石河を見る家定。
石河「も、申し訳ございませぬ。私が命に代えてもお守りせねばならぬところを」
家定「お主のせいではない。こうなる事は余の宿命だろう」
石河「う、上様…」

○同・謁見の間
雨が降り始める。
その雨を見つめながら待つ忠優。

○同・将軍の間
家定、指を震わせながら、床の間の掛け軸を指さす。
石河「じ、軸にござりますか」
柿が書かれた軸。
石河が手元に持ってくる。
家定「余はおそらく後世には暗愚でうつけな将軍として名を残す事になろう」
石河「そ、そんな事はありませぬ」
家定「その軸を残してくれ。その柿図が余が生きた証だ」
石河「?」
家定「余が書いたものだ」
石河「!」
まじまじと絵を見つめる石河。
にこっと微笑む家定。
石河もそれを見て微笑む。
家定「じ、条約はどうなった」
石河「日米修好通商条約は、無事締結致しました」
家定「そうか…」
家定、にやりとした後、ガクッとまた意識不明になる。
石河「う、上様、上様。奥医師をこれへ」
バタバタっと医師たちが入ってくる。
後ろに追いやられる石河。
手には握りしめられる掛け軸。

○同・謁見の間(夕)
雨がやみ、夕日が差し込んでいる。
忠優、目を閉じ瞑想している。
バッと襖が開き、平伏する忠優。
顔をあげると家定ではなく使いの者。懐から書状を取り出し、叫ぶ。
使い「上意である」
書状の表紙に上意と書かれている。
使い「老中松平伊賀守忠固に重罪の嫌疑あり、これを吟味するゆえ、その間貴殿を登城停止に致す。登城停止は明日より適用とする」
忠優「!!」
口上が終わると同時に、ゴーンゴーンと就業時間終了の鐘の音。
忠優「待たれよ」
使い「終業の刻限にてこれにて」
使いの者、さっさと退室していく。
忠優「…」

○忠優邸・応接間(夜)
忠優が石河、本郷と面会している。
石河「う、上様が…、お亡くなりになられました」
忠優「な…」
言葉を失う忠優。
石河「も、申し訳ござりませぬ…」
本郷「それと本日条約締結に抗議し不時登城した御老公、尾張様、越前慶永様の隠居謹慎が発表されました。台慮との事です」
忠優、激昂する。
忠優「た、台慮のはずがなかろう。まさか上様を、亡きものにしてそのような…」
本郷「それは…、分かりません」
石河「いや、そうに違いない。上様本人がおっしゃられたのだ。確かに毒と。も、もしや2か月前に井戸が殺害されたのも同じ手の者では…」
忠優「くっ」
立ち上がって今にも飛び出そうとする。
石河「いけません。今は謹慎中の身。今出て行ったら御老公や越前様以上の重い罪が問われましょう。それこそ思う壺です」
飛びついて忠優を制する石河。
本郷「我らが内々に調査を進めます。それが分かるまでどうかご辛抱を」
傍らに置かれた阿部の太刀。

○江戸城・大広間
大勢の諸侯が集まっている。
本郷や石河も列席している。
使い「本日7月6日、第13代将軍家定様が御崩御され、新たに御継嗣であらせられる慶福様改め家茂様が第14代将軍にご就任と相成った」
一同の驚きの声。
使い「また、本日付で若年寄本郷泰固を罷免・差控・領地没収、御用取次石河政平を罷免・差控とする」
がやつく一同。
『おい、聞いたか。本郷と石河が奥医師岡櫟仙院と謀って公方様謀殺の嫌疑と』『う、上様に毒を?』『上様崩御と同時の辞令発表とは尋常ならざる御沙汰。やはり二人が』のひそひそ声。
皆の白い目が本郷と石河に降り注ぐ。
呆然となる本郷。
わなわなとふるえる石河。
石河「う、うおおおおおおお」
石河、慟哭の叫び。

 

【画像】日米修好通商条約批准遣米使節団

 

 

 

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